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最初から、1番は工藤一家。2番は黒羽一家と思っていたお題。
…タイトル的に、快斗の魚嫌いで遊ぶ快斗の母親話とか良いかなと(笑)
ただ、予定変更で初っ端が黒羽になってしまったため、唸った結果。
4巻も発売されて、世間はまじ快な風だろうから、良いやもう。
と勝手に解釈して、2連続まじ快な話になっております。

黒羽一家のとある1日な話であり、メインは快斗と盗一さん。
冒頭の魚ネタは全く関係ないものとなってます。


お題配布元:ラフライフ
『親子お題:今日の晩御飯は?

「――今日の晩御飯は?」

 家の玄関先。
強風にあおられたかのような勢いのある威勢の良い音を立てて、
聞こえてきたのは、玄関の扉が開いて閉まる音。
その音に驚いて、ガスも切らぬまま、台所から玄関へ通じる廊下へ顔を出す。
見つめた先には、元気良くドタドタと自分の方へ駆けて来る息子の姿。

「あ、母さん!なぁ、今日の……――んぐっ!?」

 はじけた声で言葉を発した途端、片手で口にフタをされ、強制的に黙らせられる。

「シィーッ!」

 唇の前へ人差し指を立てながら言うと、息子の口を塞いでいた手を離した。

「ゴメンね、快斗。今日はちょっと大人しくしててくれる?」

「へ?」

「お父さんね、今日のお昼過ぎ仕事から帰って来て倒れたのよ。
 お医者さんはただの過労、って言うんだけど、熱が高くてね。
 今休んでるけど、部屋で寝てるの邪魔しちゃ悪いでしょ?」

「……うん」

 母親の話で、さっきとは打って変わってトーンダウンした息子の口調に、
母親はニッコリ笑うと、息子の頭を優しくなでる。

「大丈夫よ。ここしばらく毎日仕事があって疲れただけだから、
 少し休めば直ぐに元気になるわよ」

「……うん」

 励ましてみても、息子のトーンダウンは戻らない。
困ったようにため息をもらしてから、コツンと息子の頭を小突く。

「ホーラ!そんな顔してたら、お父さんに怒られるわよ。
 『マジシャンはいつでもポーカーフェイスだろ』って」

「それはそうだけど……」

 言われた言葉に口を尖らして、相手を不満そうに睨む。

「……そうじゃないもん」

「あらあら。随分頑固でひねくれたマジシャンさんね。
 弟子がこれなら、師匠はもっと大変そうかしら」

 わざとおどけて言ってみれば、息子は余計に口を膨らます。

「まあ、今日の夕飯は予定通りやってあげるから、少し待っててね。
 お父さんのおかゆの方、先に作ってしまうから」

「あ……」

 母親の口から出た言葉に、返事を返しかけて、
既にキッチンへと戻りだした母親を見ると、静かに口を閉じた。


 薄っすら意識が戻りかけた頃、耳の奥でかすかにするノック音に気付く。

「――どうぞ」

 その声で部屋の扉が開き、入ってきた人物を意外そうに見た。

「快斗か。どうした?」

「うん……母さんのおつかい」

 そう言うと、寝ている父親の傍へ、小さな土鍋と小鉢の入った盆を置く。

「ああ、すまんな。ありがとう」

 ゆっくり起き上がってから言うと、そのまま土鍋のフタを外し、
レンゲで小鉢に少しずつ移してから、口へと運ぶ。

「――そうだ。悪かったな、快斗」

「え?」

 不意に言われた言葉の意味が分からず、キョトンとした表情で父親を見た。

「本当は今日だっただろう?初めて大人数の前でマジックを披露して、
 ギャラリーを喜ばせたお祝いに、家でパーティをやろう。と言っていた日は」

 ――丁度10日前。
盗一が参加した、マジックショーについて行った快斗は、
そこで設けられたフリータイムの際、盗一に後押しされる状態で、
ちっぽけながら、覚えたてのマジックを披露し、観客を沸かせた。

 失敗もせず、また、初めて大衆の前でマジックを成功させたということで、
夕飯に快斗の好きなメニューを並べ、まだ未発表であるマジックを
お祝いに見せてやろう。というイベントを両親揃って企画した。
その実行日、というのが今日の夜、だったというわけである。

「父さんのマジックはちょっと見せられそうにもないが、
 母さんと相談して、ご馳走だけは作ることになったから――」

「ううん。良いんだ、それ」

「ん?」

 驚いたような盗一の表情とは反対に、
快斗は左右に首を振ると嬉しそうな表情を父親へと向けた。

「母さんに『今日はいい』って言ったんだ」

「どうしてまた……凄く楽しみにしてただろう?」

「うん。それはそうだけど、どうせなら一緒に祝ってほしいからさ!
 だから、いっぱい休んで、早く良くなって、またマジック見せてよ。
 お祝いなんて、いつでも良いよ。やってくれるだけで嬉しいし、
 オレがあの場でマジック出来たのは、オヤジのお陰だし!」

 楽しそうに笑顔で言う快斗に、盗一もつられて口元を緩める。

「そうか?――それじゃあ、今度は1日丸々使ってパーティーをしよう。
 埋め合わせに、今までにないくらいたくさんのマジックを見せてやろう!」

「ホント!?ぜってー約束だぜっ!」

「ああ」

「――じゃあ、早く治るおまじない、見せてやるよ!」

 力んで言う快斗の言葉に、キョトンとした顔で快斗を見ると、
ギュッと両手を丸め、3から順番にカウントダウンして行く。
1で、結んだ両手を広げると、その手にあふれんばかりの花が咲く。
そして、いつの間に用意していたのか、自分の後ろから花瓶を取り出して、
出したばかりの花をそこへ差した。
それから、父親に向けて満足したような笑みを送った。

「――おまじない。
 早く治らねーと、花が寂しくて悲しんで、枯れちまうんだからな!」

*******************************************

昔、コナンで風邪ネタ書いたことありますが、それ以降は久々に。
どういうわけかお風呂入ってるときに思いついた話(笑)
事件物小説メインですが、実はこういう平凡系話を書くのが一番好き。
…それにしても。快斗のお母さんの名前が何故未発表?

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